先日、台湾で歴史的な法律が国会を通過したんで今回はそれについてお伝えします。
法律の名前は
《促進轉型正義條例》
略して「促轉」と言われてます。
法律の名前になっている轉型正義(正義を転換する)という言葉、台湾社会では耳にタコができるぐらいよく聞く言葉なんですよね。前回の選挙でもみんな言いまくってました。
この言葉はもともと外国から来た言葉で英語では「Transitional Justice」、日本語では「移行期正義」と訳されてますね。
簡単に言っちゃうと、1945年から1992年まで中国国民党が独裁で台湾を支配していた時に起こった悲劇を清算しましょう!歴史の真相を追求しましょう!という法律なんですよね。
法律制定の最重要ポイントは倉庫に眠っていて封印されている過去の政府文書をオープンにしようという所ですかね。
国民党独裁時代においてどの様な経緯で拉致、監禁が行われたのか?
誰がブラックリストを管理していたのか?
いったい誰が銃殺を命令したのか?
復讐というものでは全然ありませんが、白色テロの犠牲になった遺族にとっては死ぬ前に知る権利がある、歴史の真相を知ってあの世に行きたいという思いがある様です。遺族もかなり高齢なので時間との勝負な訳です。残念ながら、関連する資料などは重要な部分や具体名などが黒塗りになっていたり、証拠自体が隠滅されてる事もあるそうですね。
今はお友達ですが、当時、中国国民党の最大の敵は中国共産党でしたから、共産党のスパイだと疑われた者は誰であろうと連行して、銃殺にしていたんですよ。もちろん、台湾独立分子なんてもってのほかです。政府のいう事を聞かない奴はみんなブラックリストで、多くの人が冤罪で死刑になっています。
歴史を明らかにするという今回の法律ですが、与野党の間では大きな論争が勃発してます。その争点となっているのが世界の偉人と崇め奉られた蒋介石。
正義を転換するんだから、全国各地に点在する独裁者蒋介石の銅像を撤去すべきじゃないのか?
全国に流通している蒋介石のコインも廃棄すべきじゃない?
「中正」という通りや学校の名前も改名すべきではないのか?
最近は討論番組もこの話題ばっかりです。何十年も同じ議論をずっとしてるんでしょうけど。今回の法律には歴史の真相を明らかにする以外にも
「公共の場所において独裁者を象徴する物は撤去又は改名を行わなければならない」とも規定されてるんですよ。
これには中国国民党も黙っては要られません。「独裁者の銅像を公共の空間に置くのは如何なものか」というアンチ蒋介石派と「歴史は歴史、そのままでいい」という蒋介石肯定派のバトルですね。
「中国国民党の議員は蒋介石は悪い事もいっぱいしたけど、台湾に貢献した事もあるんだ!全否定はしないで!」という様な感じでした。
彼らが強調したい蒋介石の良かった所とは….
・蒋介石は中国共産党から伝統芸術品を守った(故宮博物館)
・蒋介石や中国国民党がいなければ台湾はとっくに中国共産党に支配されてた
さらに、今回の法案で中国国民党から一番反発があったのは歴史の清算を1945年以降に限定していたところですね。
批判意見としては
日本時代の黒歴史はどうやって清算するんだ
慰安婦問題はどうなんだよ
原住民問題はどこ行ったんだ
なんで中国国民党に対してだけ正義を転換すんだ
不公平だというのが不満の理由ですね。
中国国民党の暴言王「蔡正元」氏はさらに極端な持論を展開しています。
「蒋介石の銅像撤去しろと言うんだった、台湾総統府もとり壊せ!あれは大日本帝国がやってきてアヘンを売って立てた植民地主義の象徴だ!」と言っていました。これには流石に国民党の他の党員もスルーでしたね。なぜかこの人だけ毎回言いたい放題の放し飼い状態です。
今回の歴史を清算するという法律なんですけど、民進党が参考にしたのが南アフリカらしいんですよね。迫害した側と迫害された側の人達が同じ国の中で共存するためにどうやって過去を清算するのか?みたいな課題があるんですけど。まだまだ埋められない溝がありそうです。
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