政治

【憲法vs国民投票】台湾の国民投票法改正で自主憲法制定派が異論を唱える

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今日は先日、立法院を通過した国民投票法の改正案についてお話しします。国民投票とは全国みんなで1つの議題について選択するというシステムですよね。

台湾では公民投票、略して「公投 」と呼ばれています。従来の国民投票法はあまりにもハードルが高すぎて、規制でがんじがらめになっていたんです。

長い間、「鳥籠公投」と呼ばれていました。台湾は過去にも国防強化とか国連加盟などなど、合計6回もの国民投票が行われてきましたが、有効投票者数が定められた基準に届かず全て無効になっていました。

写真:新頭殼newtalk  張良一

そこで今回、国民投票法の成立要件が大きく緩和される事となったんですよ。台湾の国民投票にはステップが3つあります。1つ目は提案申請、2つ目は署名、3つ目は全有権者での投票です。

今回の修正案では、1つ目の提案申請に必要な人数が全有権者の0.5%から0.01%の人数に引き下げられて、2つ目の署名人数では全体の5%だったものが、1.5%に引き下げられました。

提案申請は大体1800人ぐらいで可能になり、署名は28万人ぐらい集まれば国民投票に持ちこむ事ができるようになったんです。めちゃめちゃ大きな変化ですよね。

更に、3段階目の国民投票でも「法定得票率」が緩和されました。「法定得票率」とは最低限のこれだけの有権者が選挙に参加しないと選挙自体が無効になりますよという様な足切りですね。

現行の法定得票率は全有権者の半数だったのが、4分の1にまで緩和されました。国民投票がやりやすくなったんで、今ホットになっている労働基準法とか同性婚法などの法律改正時には国民投票が大活躍するでしょうね。




「さすがは台湾、アジアで一番民主的な国だけあるよね、素晴らしい!」

と思いきや、今回の法案には一部で大きな反発が出ているんです。一番反対しているのは、まさかの台湾独立派のかなりグリーンな方達。国民投票で台湾独立を問うというのが彼らのと目標だったのに、なんで?って思いますよね。

法案の1つ目の批判点は

中国との政治協議などが今回の国民投票法の対象外

となっているところです。

中国国民党が強引に法案を通そうとした中台サービス貿易協定は記憶に新しいですよね。ひまわり学生運動では立法院が占拠されたりもしました。中国に飲み込まれるかもしれない国の重大な法案を簡単に通してしまっていいのか?

国民投票で民意を問うべきではないか?というのが彼らの主張だったんです。当時の民進党もこの主張を支持していました。それに、2012年の総統選挙の時に蔡英文は重大な外交協議は国民投票法に規定すべきだと公言していたんですよ。

選挙前と言っていた事が違うじゃないかという事で、今回の限定的な国民投票法に一部の民進党支持者は大激怒。裏切られたと感じる人も多かったようです。

さらに、大きな反発があったのが

中華民国憲法と国民投票法の関係

についてです。

新しい国民投票法には憲法に関する領土や国名の変更などの項目は取り扱えないと規定してあります。これに対して時代力量は憲法も国民投票法によって変更可能で、排除されるべきではないと主張しています。国民が自分たちで下した決定である限り、憲法はそのように変更されるべきだという考えですね。




「一体、憲法の下にある国民投票法が憲法自体を変更する事ができるのか?」って疑問思いますよね。

「国民投票法は中華民国憲法の下にある手続き法であるから、この法律で憲法の内容自体をいじることはできない!憲法改正は憲法に規定された手順を経なければいけない」と民進党の議員は説明しています。

私自身、この論争を初めて聞いた時はちょっとびっくりしました。もちろん憲法は憲法改正の手順を踏まえなきゃいけないだろって思ってましたから。

日本には改憲勢力と護憲勢力がありますけど、台湾には改憲勢力に加えて、現行憲法破棄を支持する人も多いんですよね。憲法に関する考え方は台湾も日本も同じなのかもしれません。

日本国憲法はアメリカ占領下に制定されたもので、これは国際法上も効力をもたないんだ」

という人と同じ様に、台湾にも

「今の憲法は外来政権、中華民国によって押し付けられたものだからそもそも遵守する必要がない」

という自主憲法制定派がいるんです。

憲法をないがしろにしているというよりは、

中国人に押し付けられた憲法は認めない!

中国人が南京で制定した中華民国憲法をなんで台湾人守らなければいけないのか?

国民投票法によって自分たちで新たに憲法を制定しよう!

というような考えです。

日本もアメリカに憲法押し付けられましたけど、台湾なんてもっと悲惨ですよ。台湾人は憲法制定とは全く関係ありませんでしたから。これまでに憲法改正自体は行われましたけど、今までに台湾国民が直接憲法を決定した事は一度もありません。しかも、台湾の憲法改正は日本よりも高いハードルの4分の3の国会議員でやっと発議できるんですよ。そりゃ、フラストレーションも溜まりますよね。

日本では「日本国憲法ありがたや」みたいな感じで憲法を神のように崇め奉る人もいますけど、台湾にも中華民国憲法を崇める一派がいるんですよ。ディープブルーの政治家は大中国思想を守りたいというよなガチガチの護憲派が多いですよね。俺らの中華民国憲法には指一本触れさせないという感じです。

今回の法改正に反対だったのは時代力量ですが、中国国民党は民進党と一緒に賛成しています。憲法と中台関係に関する項目は除外するという条件ならば中国国民党は譲歩できますよという感じですね。まぁ、中国国民党が賛成する国民投票法なんで、その程度の法律ってことです。

色々ありましたけど、国民投票法で憲法をいじるのはかなりの難易度がありますよね。今回の投票法改正を一番警戒しているのはもちろん中国ですが、同じぐらい懸念しているのはアメリカなんです。アメリカとしては「とりあえず緊張を高めないで!あんまり中国を刺激しないでほどほどにお願い」と言う感じですかね。圧力あったのかなかったのかわかりませんけど、ホワイトハウスの言う事を聞かなければ生きていけませんから、仕方ないです。




 

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